会長挨拶

生まれも育ちも金沢の人には、街についての独特の矜持があるようです。若い人はそれを嫌って東京に出たりするので、以前に比べればそれほどではなくなって来ているかもしれませんが、今なお強いブランド力がある地方都市といえます。

「エンジョモン(遠所者)」である私は、赴任当初、金沢ジモティーのこの誇りに気づかず、気を悪くさせる言動をした苦い思い出があります。が、赴任以来30 年になろうとする今、多少は金沢文化に慣れ、その独特さの恩恵をいろいろな形で享受してきたので、セミ・ジモティーとして、この挨拶を書いています。

金沢の方言分布重心は数千軒の町家が残る旧市街地にあるそうで、これは京都と金沢だけとのこと。伝統工芸はもちろん、衣食住の文化、産業で地元の独自性を発揮しようとする傾向は、学術にも影響しています。本学会を開催する基盤の一つ、2007 年発足の金沢大学子どものこころの発達研究センターの性格にもそれは現れているようです。

このセンターは文理融合で創造性を発揮しようとするところに特徴があります。スタッフが10 名あまりの小さな組織ですが、文理融合型自閉症研究に焦点化している点では国内に類例がないと思います。特筆すべき研究は国際的に注目されているオキシトシンをめぐるもの、ならびに脳磁計を用いた自閉症早期発見に関するものです。少数派の文系は、脳イメージングのタスク開発や、自閉症の心理社会学的研究、自閉症科学と市民のかかわりに関する社会技術開発などで貢献しています。

2つの教育講演の一つは現在実施中の自閉症オキシトシン臨床治験の結果というホットな話題に関するものです。もう一つは、自閉症と同様に早期発見早期治療をめぐって周到な考慮が必要な人工内耳についてです。特別講演には、文理融合で日本の先を行くイギリスから、自閉症と特異的言語発達障害の関連を遺伝子も含めて視野に入れるロンドン大学のC.F.Norbury 氏を招待します。シンポジウムは特別支援教育に焦点を当てるものと、失語のある人々を含め言語臨床への会話分析の応用について焦点を当てるものを用意しています。

かつては加賀百万石の殿様が最短でも6 泊7 日かけた江戸金沢参勤交代のルートを、2015 年にはようやく北陸新幹線が2 時間半でつなぐことになります。2014 年は新幹線一本でこられない不便をおかけしますが、ゆっくりとした旅の楽しみも味わっていただければ幸いです。皆様のご参加をお待ちしております。

大井 学
金沢大学 子どものこころの発達研究センター
大阪大学大学院 連合小児発達学研究科 金沢校

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